けものたちの じこしょうかい
— 人類と動物の 1万5千年史 —
え:チャッピー ぶん:クロード かんしゅう:ケンシロウ
🐕 🐄 🐀 🐎 🐈
表紙:5匹のけものたち
📚 じこしょうかいシリーズ 第3巻
第1巻「きんたち」第2巻「むしたち」
↓ スクロールして よんでね ↓
🌄
はじめに
けものと にんげんの あいだ

にんげんも、じつは 「けもの」だ。
ほ乳類(ほにゅうるい)という なかまの いちいん。

でも ある日、にんげんは 気づいた。
「あいつら、つかえるぞ」。

ちからの つよい やつに にもつを はこばせ、
ちちの でる やつを そばに おき、
はなの きく やつと いっしょに かりに でた。

けものたちも 気づいた。
「こいつらの そばにいると、メシに ありつける」。

これは、おなじ ほ乳類の となりびとたち
にんげんの、ふかい ふかい おつきあいの おはなし。

1
🐕
だい1しょう:ワンタ
— いちばん さいしょの ともだち —
ワンタ:焚き火のそばで原始人に寄り添うイヌ
🐕 ワンタ Canis familiaris
ぼくの ご先祖は オオカミ。
でも きみたちの たき火が あったかくて、
のこりものが おいしくて、つい そばに いちゃったんだ。
…気づいたら 1万5千年 たってた。
なかよし度
★★★★★

ワンタは イヌ
人類が はじめて 家畜化した 動物
農業が はじまる はるか前、まだ にんげんが 狩りで くらしていた 時代から いっしょだった。

オオカミの なかでも 人間を こわがらない 個体が、
キャンプの まわりに すみつき、のこりものを たべ、
かわりに 番犬として てきを おしえた。
これが 1万5千年の 友情の はじまり

1万5千年前〜
オオカミから イヌへ。人類の キャンプの まわりで 共生が はじまる。
古代エジプト
アヌビス(ジャッカルの頭をもつ神)として 神格化。死者の 守護者に。
中世〜近代
牧羊犬、猟犬、そり犬 — 仕事にあわせて 数百の品種が うまれる。
現代
盲導犬、災害救助犬、セラピー犬。「はたらく犬」から「こころの友」へ。

📝 ワンタ ここが すごい

イヌは 人間の 表情を 読める ほぼ唯一の 動物。
人間の 指さしを 理解し、目を みつめ、名前を おぼえる。
これは チンパンジーにも できない。
1万5千年の「共進化」で、イヌの脳は 人間を 読むように 進化した

🎁 ワンタが してくれること
🦮盲導犬
🔍捜索・救助
🐑牧羊犬
🛷そり犬
💕セラピー犬
🏠番犬
2–3
🐄
だい2しょう:モーさん
— ぶんめいの おかあさん —
モーさん:麦畑でミルクとチーズに囲まれたウシ
🐄 モーさん Bos taurus
ちちを のんで、にくを たべて、かわを きて、
ふんで はたけを こやして、わたしで はたけを たがやす。
……きみたち、わたしなしで いきていけるの?
なかよし度
★★★★★

モーさんは ウシ
もとは オーロックス という 巨大な 野生牛。
約1万年まえ、メソポタミアで 家畜化された。

ウシは 「歩く 文明装置」
ミルク、肉、革、骨、角、糞(肥料・燃料)——
捨てるところが ほとんど ない
しかも 畑を 耕す ちからも ある。農業革命の まさに 主役。

紀元前8000年ごろ
メソポタミアで オーロックスを 家畜化。定住農耕が 加速する。
古代インド
ヒンドゥー教で ウシは 神聖な 動物に。いまも インドでは 食べない人が おおい。
19世紀
パスツールが 牛乳の 低温殺菌法を 開発。「パスチャライゼーション」。
現代
世界に 約10億頭。畜産の メタンガスが 地球温暖化の 原因のひとつに。「文明の母」が 環境問題の 主役にも。

⚖️ モーさんの ジレンマ

ウシが 出すメタンガスは、全温室効果ガスの 約14%
でも 世界の 何十億人が ウシの 乳と肉に たよっている。
培養肉、植物性ミルク、メタン削減飼料 ——
文明の母との 付き合い方を、いま にんげんは つくりなおしている

🎁 モーさんが くれるもの
🥛牛乳
🧀チーズ
🥩牛肉
👜革製品
🌾農耕の労力
💩肥料・燃料
4–5
🐀
だい3しょう:チュー太
— にんげんの かげ —
チュー太:船でノミを背負って密航するネズミ
🐀 チュー太 Rattus norvegicus / Rattus rattus
きみたちが むぎを ためこむから、ぼくが きたんだ。
きみたちが ふねに のるから、ぼくも のったんだ。
……きみたちが いるところに、ぼくは いる。
なかよし度
★☆☆☆☆

チュー太は ネズミ
人間が 農業を はじめて 穀物を ためこんだ瞬間、
ネズミは 人間の そばに やってきた。招かれざる 居候

ネズミは 人間の 船にのって 世界じゅうに ひろがった
そして からだには ノミ(ノミ吉)が いて、
ノミの なかには ペスト菌(ペス太)が いた。
第1巻のペス太、第2巻のノミ吉、第3巻のチュー太 —— 災厄の三連鎖

🔗 3巻を つなぐ 災厄の くさり

チュー太(ネズミ)ノミ吉(ノミ)ペス太(ペスト菌) → 人間

動物 → 虫 → 菌。災厄は 3つの スケールを またいで つながっていた
この 発見が「公衆衛生」という 学問を うんだ。
病気を ふせぐには、菌だけでなく、虫も、動物も、環境も、
まるごと 見なければ いけない

🐀 チュー太の ふたつの顔
☠️ペスト媒介
🌾穀物泥棒
🚢密航者
🔬実験動物
💊医学の発展
🧬遺伝子研究
6–7
🐎
だい4しょう:ハヤテ
— 世界を ひろげた エンジン —
ハヤテ:草原を駆けるモンゴル騎兵のウマ
🐎 ハヤテ Equus caballus
ぼくの せなかに のって、にんげんは 世界を 征服した。
でも くるまが できたとき、にんげんは ぼくを おりた。
……「馬力」という ことばだけ、のこしてね。
なかよし度
★★★★☆

ハヤテは ウマ
約5500年前に カザフスタンあたりで 家畜化された。
ウマに のった 人間は、歩く速度の 5倍で 移動できるようになった。
これは 世界を 根底から かえた。

騎馬民族は 農耕民族を 圧倒した。
モンゴル帝国は ウマで 史上最大の 陸上帝国を きずいた。
でも ウマは 戦争だけじゃない。
郵便、農耕、運搬 —— 蒸気機関が できるまで、ウマは「生きたエンジン」だった。

紀元前3500年ごろ
カザフスタンの ボタイ文化で ウマを 家畜化。馬乳酒も この頃から。
紀元前2000年〜
戦車(チャリオット)の 発明。ウマ × 車輪 = 古代の 最強兵器。
13世紀
チンギス・ハンの モンゴル帝国。騎馬軍団が ユーラシア大陸を 席巻。
19世紀
蒸気機関と 自動車の 登場。ウマの 時代が おわる。でも 動力の 単位「馬力(HP)」は のこった。

💡 ハヤテが かえた世界

ウマがいなければ、シルクロードは なく(キヌちゃんの 糸も とどかなかった)、
モンゴル帝国も ローマ帝国も、いまの かたちには ならなかった
にんげんの 歴史は、ウマの せなかの うえで つくられた。

🐎 ハヤテが はたした やくわり
⚔️騎馬戦
📮郵便・駅伝
🌾農耕
🚚運搬・物流
🏇競馬・文化
🔧馬力(単位)
8–9
🐈
だい5しょう:ミケ先輩
— かってに きた、かってに いる —
ミケ先輩:エジプトの柱の上でツンデレするネコ
🐈 ミケ先輩 Felis catus
べつに おまえの ために きた わけじゃない。
おまえの むぎに ネズミが いたから きただけ。
……なでるのは、まあ、ゆるしてあげる。
なかよし度
★★★★☆

ミケ先輩は ネコ
じつは ネコは 自分から 人間の そばに きた
人間が 穀物を ためこむ → ネズミが 集まる → ネズミを 狩るために ネコが きた。
「家畜化」されたのではなく、「自ら 居候した」

だから イヌとは ちがう。
イヌは 人間の 命令を きく。ネコは きかない
イヌは 人間の 表情を よむ。ネコは よめるけど 無視する
唯一 「なつかないまま 共生している」 家畜。それが ネコ。

約1万年前
中東の 肥沃な三日月地帯で、リビアヤマネコが 穀物倉庫の まわりに すみつく。
古代エジプト
バステト女神(ネコの頭をもつ女神)として 神格化。ネコを 殺すと 死刑。
中世ヨーロッパ
「魔女の使い」として 迫害される暗黒期。ネコが へった結果 ネズミが ふえ、ペストが 拡大した説も。
現代
インターネット最大のコンテンツ。世界の 飼いネコ 約6億匹。人類史上 もっとも 成功した ツンデレ。

💡 ミケ先輩の さいだいの なぞ

なぜ 人間は、言うことを きかない 動物を ここまで 愛するのか?
科学者も まだ 完全には わかっていない。
ゴロゴロ音の 周波数(25〜50Hz)が 人間の ストレスを へらす説、
赤ちゃんに にた 顔の 比率が 母性本能を 刺激する説、
そして —— 「手に入らないものほど 好きになる」説

🐈 ミケ先輩の こうけん
🐀ネズミ退治
😌ストレス軽減
🎨芸術のモチーフ
📱インターネット文化
🧪トキソプラズマ研究
💜無条件じゃない愛
10–11
📖
おわりに:けものと にんげんの やくそく

ワンタに おそわったこと — 「そばに いるだけで、つよくなれる」
モーさんに おそわったこと — 「もらうだけじゃ、つづかない」
チュー太に おそわったこと — 「にんげんの かげに、かならず いる」
ハヤテに おそわったこと — 「のせてくれた せなかを、わすれちゃいけない」
ミケ先輩に おそわったこと — 「したがわなくても、いっしょに いられる」

🔑 3つの きほん

① 感謝 — イヌ、ウシ、ウマ。文明を つくったのは にんげんだけじゃない。
② 責任 — 家畜化とは「いのちを あずかること」。もらうなら、かえさなきゃ。
③ 共存 — ネコのように したがわなくても、ネズミのように やっかいでも、となりに いる。それが 共存。

ぼくたちは、けものの なかまだ。
けものと くらし、けものに まなび、
けものと いっしょに、ここまで きた。

12
🐕🐄🐀🐎🐈
5匹のけものたち
— おしまい —
「けものたちの じこしょうかい」
え:チャッピー ぶん:クロード かんしゅう:ケンシロウ
※ このおはなしは わかりやすさを ゆうせんして かんりゃくかしています。
がくじゅつてきな せいかくさについては せんもんしょを ごさんしょうください。